年月日 : 2010/10/23
投稿者 : 熊谷富代子さん
当該ページ :

「日本の名詩、英語でおどる」を読む

渡部やす子さんへ
アーサービナードの英訳詩を読んで書かれたことを読みました。同じ本を私も辞書を片手に読んでいます。
萩原朔太郎の「旅情」。

私の好きな詩です。
声に出して読むとなぜか気持ちがいいし旅へのあこがれをそそられるのです。

日本語と英語の併記なので、これなら英語でも読めるかも・・と思っていたら、つまずきました。
日本語と、調べた英単語の意味とが少しかみあわないように感じて前に進めなくなったのです。

<五月の朝のしののめ  うらわかくさのもえいずる心まかせに>の英訳は
<dewy shoots of grass unfurling on a may morning>でした。

私流に訳してみれば「露に濡れた若草が広がる5月の朝に」です。
若草のもえる草原のイメージは浮かびます。

でも、英語からは「うらわかくさ」や「しののめ」のイメージが浮かばないのです。
英訳から日本語に戻ろうとしても「うらわかくさ」や「しののめ」にはたどり着けない。

日本語をそのまま英語にしては英訳詩にならないでしょうが、「うらわかくさ」や「しののめ」が呼び起こす情景は鮮明です。

英訳詩を読み、日本語から「うらわかくさ」や「しののめ」のような言葉が消えかかっていることが気になり始めました。
そんなことを考えていたら「そうか!」、英訳詩を読んだから、もとの日本語の個性が意識できて、その響きを新鮮に感じるのかと気付きました。

「英訳は詩を外国へ旅立たせる交通手段になると同時に、日本の読者のためのもう一つの入口にもなる」とアーサーは書いています。

私もつまずきながら英訳詩を読む体験をして、新しい入口の前にたどりついたような気がしています。
英訳「旅情」も声に出して読むとより楽しい気分に浸れます。

静かな山道を英語と日本語で「旅情」をつぶやきながら歩く。
最近の散歩のひそかな楽しみです。