New

『教育』を読む会12月例会

日時 2023年12月9日(土)
10:00~12:00
会場 みやぎ教育文化研究センター
会場の詳細はこちら
参加費 無料
テキスト 『教育』2023年12月号
内容

【12月号】
特集1  青年期の教育困難とインクルーシブ教育
特集2  授業料無償化時代の公私立高校

【特集1】2007年の文科省通知によると、特別支援教育とは「発達障害も含めて、特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において実施されるもの」と記されている。「全ての学校」には高等学校も含まれる。しかしながら、高等学校はごく一部に通級指導教室の設置がされてはいるが、十分ではない。かつ、教育困難校や定時制通信制単位制の学校には、義務教育校以上に、特別支援教育対象の生徒がいる可能性が高い。さらには、大学においても困難を抱える若者がいることが予想される。特集1では、青年期の実践に光を当て、高校・大学を含むインクルーシブ教育の可能性とあり方を再考したい。

【特集2】戦後新制高校は、公私立とも授業料を徴収の形でスタートしたが、2010年の高校無償化法、20年の高校就学支援金制度改正で所得制限付きの無償ではあるが、授業料無償化体制へ移行した。しかし、無償化後も公私立とも「隠れ教育費」として教科書・教材・修学旅行・通学・部活にかかる費用などが残り、私立の数万~数十万円の施設設備費の負担は残されたままとなった。一方、無償化は、学校財政への公費投入で、財政面では公私の差が縮まり、「公立とは、私立とは」そもそも論から改めて論じる時となった。
高校教育とは何か、無償の意味は何か、公私立の役割は何か、市民間の議論を始めたい。
(各特集「表紙のことば」をもとに作成)

前回の
様子

『教育』を読む会11月例会の感想

今月は、9名の参加者がありました。
2023年11月号の特集1「学校の働き方改革 クライシスからぬけ出す道へ」について、髙橋哲さんの論稿「支配としての給特法改正問題-新自由主義と分断統治を乗り越える教育運動の課題」を輪読し、話し合いを行いました。
自民党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」提言は、教員の時間外在校等時間について「上限指針」(原則月45時間、年間360時間)を改善することを提起しているが、休憩時間さえまともに保障されておらず、指針はあくまでも目安とされまともに守られていない現状で、どれだけの実効性のある提言になるのだろうかと疑問も出ました。
また、標準授業時数について、かつての(1968・1969・1970年の学習指導要領改訂に伴う学校教育法施行規則改訂か?)学校教育法施行規則改訂で最低基準から標準授業数とされ、教育内容について適切に教えることができていれば、標準を下回ることもありうるというのが文部科学省(当時の文部省)の公式見解であるはずだが、「標準授業時数を確保する」という理屈がどこからか要請され、本来は授業時数計画も学校ごとの裁量であるはずなのにそうなっていない現状についても指摘があり、議論にもなりました。逆に、東日本大震災の後、子どもたちに運動させることもままならないのに、体育を標準授業時数分やったことにするよう求められ、困惑したという事例も紹介されました。
教育現場には、労働基準監督署にあたるところがなく、相談先が人事委員会しかないが、専門的な知見を有するスタッフがいるところはごく一部の自治体に限られるという話もありました。
どう考えても「超勤4項目」以外の業務が肥大化していることは自明ですが、「教師にとってほんとうに大切な仕事をしたい」という思いは多くの教師に共通していても、では何が「ほんとうに大切な仕事」なのかを考えるとなかなか難しい。このあたりのことが、給特法そのものを廃止し、超過勤務を認める場合は学校ごとに三六協定を締結していく仕組みにしていくという、この特集で基調となっているように思われる方向性を目指す際に、どう関わるのかも考えていかないといけないのではないかという話も出ました。
2008年の学校教育法改正による主幹教諭、指導教諭の導入については、髙橋論文の指摘する「金銭の支配力」(11頁)による分断統治と教員支配を強化するものである点については、確かにそのようなことがあると理解した上で、次のような話も出ました。
指導教諭について、文部科学省がこれを職位として法的に位置づけた背景には、管理職にはならないが、実践では頑張っている教員の処遇を改善するということもあったのではないか。宮城県では、主幹教諭を設置する際には、はじめは30時間分の講師をつけ、授業負担を軽減していたがその後どうなったのか。主幹教諭については具体的な職務が明確には定められておらず、学校ごとにその職務が変わってくるが、教諭として一緒に仕事をしていて問題のなかった人が主幹教諭になって管理・運営が滞ると、そこで教諭との関係がぎすぎすしたり、主幹が管理職よりになって教諭との距離が出来てしまっている場合もある。北海道や岩手など地域が広いところでは、管理職になってしまうと遠方に勤務することになるため、それを嫌う人も多く、この状況を放置すると、家庭をあまり顧みない人が管理職になってしまい、職場もますます労働安全衛生が守られなくなるのではないか。
こんな話が出ました。今回の特集で明らかになった問題や実態について、子どもたち自身はどう考え、あるいはどんな状況の中で育ち学んでいるのかという視点もあるとよいのかなとも思いました。(文責:本田伊克)