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ゼミナールsirube

未来可能性について考える7

日時 2023年11月6日(月)
13:30~16:00
会場 みやぎ教育文化研究センター
会場の詳細はこちら
参加費 無料
テキスト 太田直道 著『人間とその術』
内容

テキストの『人間とその術』と、その補足資料を使いながら参加者で読み合い、その内容について意見交流しながら学習して行きます。テキストは、毎回1節ずつ読み進める予定でいます。

今回は、テキスト「第3講 崩壊論-作ったものは壊れる 《1 崩壊の構造》」を読み合います。途中からの参加でも大丈夫です。心配する必要はありません。興味のある方は、ぜひご参加ください。お待ちしてます。

前回の
様子

Shirube感想
今回は、第二講 術とは何か 三 ホモ・ファーベルを読みました。
術とは、制作物を生み出す営みであり、それには、「ものがたり」と「ものづくり」の二つの世界があるということが前々回のお話、前回は「もの」について、それで今回は、「もの」を作る人間の側の話でした。
ホモの付く言葉には、「ホモ・サピエンス」「ホモ・ファーベル」「ホモ・ルーデンス」などがあります。今回の「ホモ・ファーベル」とは、フランスの哲学者アンリ=ルイ・ベルクソンによって作られた言葉です。道具のための道具を製作すること、あるいはその製作に変化をこらしていく能力(創造性)が人の知性の本質であると指摘し、創造性を持つ人を「ホモ・ファーベル(工作人)」と定義しました。
今回の「もの」は「ものがたり」の方に重点が置かれて話されました。太田先生が、シェイクスピアや源氏物語がお好きで、楽しそうに話されていたのが、印象的でした。
制作物を生み出す行為=術は、「もの(世界・自然)」の模倣行為である・・・というのが、今回の中心だったと思います。というこは、先のベルクソン定義「創造性を持つ人」というのとは、少し違うようです。
私は今まで制作で大切なことは、創造性だと思っていたのですが、太田先生は、「人間が独力で創造することができるものなど何もないのだ。」と言い切っておられます。そして、「人間の哲学もまた、幼児のように世界の模倣に徹しなければならない。」とおっしゃっています。
今回の文章の中で、私は、「人間の行為、すなわち『もの』との交渉において、最も重要なことは、『もの』への敬意を保つことであり、『もの』の存在意味を知ることであり、『もの』との交渉の交渉の『奥行き』を守ることである。どれだけ深く『もの』の真相に分け入るかということが、人生の深さを決めるのだ。あるいは、人がどれだけ深く『もの』に『根ざし』て考えるかということが生きる意味となるのだ。」というところが気に入りました。深い人生を生きる、そのためには、「もの」の真相に深く分け入ることというのは、そうだなと納得します。深い人生を生きたいものです。
そして、「何を模倣するかというのが人間の品位を定める。」という文に、どきっとしました。私たちは、日々、いろいろな「もの」を制作しています。それはすべて模倣なのでしょうが、私など深く考えずに行っています。その無意識的な毎日の営みが、人間の品位を決めているというのです。もう少し意識的に「品位」ということを考えて模倣していきたいと思いました。
その他、アリストテレスの制作論や世阿弥の能楽の話などがありました。アリストテレスによると、制作は卓越した行為の再現(模倣)である、世阿弥によると、能楽は「おもしろき」ものと「めずらしき」ものの猿まねであるということが述べられていました。どちらも芸術は、「神わざ」を模すということのようです。芸術でさえも模倣だというのは、私にとって新たな考えでした。