研究年報第３号の発刊に当たって

今回の第３号では、最近急に突出してきた課題というより、もう少し以前からの教育政策がらみの問題として生じて来た「子どもの生きづらさと学校の困難」に焦点を当て、その現状の事実と背景に関する考察を問題提起してみることにしました。
ここ１０数年間を遡ると、津波やコロナ禍といった外的な影響・制約も重なりましたが、学校としてはそれ以前からの能力主義的教育政策のもとで、不登校の子どもが急増し、いじめ・暴力行為（荒れ）・自死等も年々増え続けて来ました。また同時に、この間の学校には、学力主義を優先しつつも子どもを包括するインクルーシブ教育も謳われ、相矛盾する教育政策のもと、子どもたちの学びの組織の分離・分断が広がり、それが生きづらさや学校と教師の困難になっている状況も多々覗えます。
今号では、多くの教育関係者が実感している「子どもの生きづらさや学校の困難」について、客観的なデータと現場教員への聞き取り調査から明らかにし、要因や課題に対する考察を行うと共に、この状況下でもどういう対応が可能なのか、「学校とは何か、教師の仕事とは何か」を問う実践的な提起も含めて特集を組んでみました。

（みやぎ教育文化研究センター運営委員長　　数見　隆生）