『教育』を読む会 2月例会

日時 2020年2月8日(土)
10:00~12:00
会場 みやぎ教育文化研究センター
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参加費 無料
テキスト 『教育』2020年2月号
内容

特集1 いま求められる校長の役割
特集2 「みんなの学校」は誰のもの?

この間の校長権限の拡充や「チーム学校」などが提唱されるなかで、昨今、校長による独自の学校改革が注目されたり、それに関連する書籍の出版や映画化なども行われたりしている。その際、考えなくてはならないのは、求められるべき校長の「リーダーシップ」とは何かということだろう。特集1は、そのような校長の役割について考えていく。学校現場の実態や課題も含め話し合いたいと思う。
特集2は、特集1とも関係するが、多様な人々による「手づくりの学校」づくりに焦点を当て、その取り組みを追う。

前回の
様子

今回は、1月号の第1特集「インクルーシブと特別支援教育を深く知る」について、窪島務さんの論文「『インクルージョン』とは何か―教育実践と教育学に提起するもの」を輪読しつつ、話し合いました。
また、第2特集「わたしの教師像をつくる」に寄稿された伊藤真由美さん「私にわたされたバトン」について、ご本人も交えて語り合いました。

特集1の基調は、「インクルージョン」「インクルーシブな教育」とは、少数者をメインストリームの制度・カリキュラム・授業へと適応させる「統合教育(インテグレーション)」ではなく、サラマンカ宣言が掲げる「万人のための教育」を実現するために既成のカリキュラムや教育方法を積極的に改変していくことが大切だという認識(汐見稔幸さん「多様な学び手の願いに応えて」44‐45頁)にあると思います。
施行されてまもなく12年が経つ特別支援教育の実際が、こうした方向性に沿うものであるのか、遅滞や後退の兆しや動きはないか、実現可能性の面で考えなければならないことはないか。参加者の話し合いは、およそこうしたことを中心に進みました。
就学先決定における「制限列挙方式」の温存(河合隆平論文48頁)、特別支援学校の過大・過密化や「自閉症・情緒障害学級」の顕著な増加(越野論文16頁)、障害のある子どもたちの知りたい、学びたい願い・要求を無視した教育目標・内容を押しつける通級指導の現状(加茂論文「インクルーシブ教育のもとでの特別支援学級の変貌」)などは、「万人のための教育」を目指す理念と、日本における特別支援教育との乖離を感じさせます。
参加者からは、次のような論点が出されました。
・窪島さんが指摘する「②障害以外の特別な教育的ニーズ・多様性」をまず築き、「③障害児の特別な教育的ニーズ」に対応していくべきところ、③への対応が形式的に要請される現状がある。
・高校では、障害をもつ生徒にとって「これが最後の人との出会い」の機会かもしれないと考え、できる限りその存在と要求を認めようという思いで関わっている。
・競争と格差を是認する教育政策と現実の教育と、ますます進むカリキュラムの過密化をそもそも何とかしないといけない。
・保健室に駆け込んでくる生徒が特別な教育ニーズ(Special Education Needs)を抱えていることも多いが、それを「甘え」などとしかみれず、発達的視点で捉えることのできない学校・教師の現状もある。
・SENをもつ生徒が学校との関りを離れた後、社会と関わっていくことには課題がある。
・障害のある子どもは、「単に『できる』ことと『安心してできる』『納得してできる』ことの違い」があり、「その違いと時間的開きが限りなく大きい」(9頁)ということは、ほんとうにそうだと思う。
最後の点は、越野和之さんが、あえて「障害児学校」「障害児学級」(15頁)ということばを使い、教育実践として、今日たちが築いてきた、どの子どもの学びと発達の願いと要求に応えることを追求してきた「障害児教育(学)」のアプローチに関わるところだとも考えました。
【文責:本田伊克】