『教育』を読む会 8月-第2回例会-

日時 2017年8月26日(土)
10:00~12:00
会場 みやぎ教育文化研究センター
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参加費 無料
テキスト 『教育』8月号
内容

8月、今月は特別に2度目の例会となります。今月10日から始まる教育科学研究会の全国大会は滋賀で行われます。参加したメンバーからの報告なども含め話し合いができればと思っています。
今月号は、今の時代を自由に、いきいき主体的に生きたい。生きているという充実に満ちた毎日を過ごしたい。そういう私たちの人間的な根源的要求の視座から、改めて今の教育の現実を問い、教育の針路を考えます。

 ◆8月号は、
  特集1 教育の針路を変える
  特集2 いま、教育の論点に挑む

前回の
様子

8月5日(土)の『教育』を読む会は、7月号の特集2「人工知能と公教育」、なかでも神代健彦論文を中心に読み合い、特集1とも関連づけながら、公教育のこれからや教師という仕事の在り方について議論しました。参加者は5名とやや少なめでしたが、小学校、中学校、大学、教育研究者の立場から、様々な論点が出されました。
今回の第2特集。大変面白く読みました。画期的な特集企画だと思います。「まったくもって人間の人間的なちから」である教師の「鑑定眼」(神代論文,85頁)をはじめとした<人間の教師>のちからは、第1特集の各論考にも示されています。これに対して<AI先生>は人間を模倣し続け、「特徴量」(86頁)を自ら作り出し、「子ども理解」の境地にまで達し、やがて<人間の教師>に引導を渡すのか??
とりあえず現在の時点では(いやおそらく相当先の時代まで)、第1特集に寄稿した教師たちも示している複雑で繊細で絶妙な洞察や、優しく温かな働きかけの機微、子どもや教材との対話を通じて紡ぎだされる教師一人ひとりの物語が読み手に訴えるちからなどに支えられていると思います。
しかし、<AI先生>がいずれこうした境地に達するかもしれないとしても、まずもって脅威的なのは、神代さんも指摘するように、わたしたちの教育的価値が「単なる技術的可能性」にすり替えられつつあることでしょう(86頁)。
教育目標が、「現在測定することが可能なもの」という評価の技術的可能性(87頁)に回収されてしまえば、より精緻化した評価指標・技術とビッグデータの活用を通じた教育統制はさらに進んでいきます。この点は、『教育』8月号で鈴木大裕さんも指摘しています。
こうした評価のテクノロジーに依拠した目標論なき教育統制の動きは、各学校でのスタンダード化によってこれを受け入れる下地が作られ、さらに強まっていくでしょう。どう対抗していくべきでしょうか。
教育のAI化が進めば、人間の教師の仕事はより周縁化・断片化されたうえに過密労働化する。「人工知能が人間の仕事を奪う」という単純な話ではないということが、山本宏樹論文(近未来エッセイ?)、佐貫浩論文、神代論文に共通して打ち出されている点も興味深く読みました。パソコンが職員室に導入されてから何が起こってきたかを考えてみても、学校の現状とやはり地続きの問題ですね。
「スロー・ペダゴジー」(90頁)という方向性をいち早く打ち出し広めていくことがファーストな(喫緊の)課題であるという若干皮肉な構図に、いまの教育と社会をめぐる課題が集約されているようにも読めました。(本田)